製薬事業のコアである研究開発の現場や、この10年製薬業界のキーワードだったメガファーマ化の背景と露呈した問題点など、良い意味で、製薬業界についてのイメージが次々と覆され、読んでいて爽快感があった。天文学的数字の組み合わせから、一つの効能のある化合物に狙いをつけ、見つけてからも発売まで10年かけて製品化へ向け実験を繰り返すというサイクルの長さに驚かされた。
製薬は特許に守られてるから安泰という感じがしたが、実は特許を取れる薬は世界で年20種弱しかなく、メガファーマも稼ぎ頭の数種に依存しているので、特許が切れたら収入がた減り、期待していた新薬開発がこけたら大リストラ…ということになる(実際ファイザーがそうなった)。今、大製薬会社の収入の半分を支えてきたドル箱の多くが次々特許切れになっているという。めぼしい有望な金鉱を掘り尽くした今、新薬開発の現場には、難度の高い鉱脈しかなく、巨体を食わせるために数百億という腹の足しにならない需要ではなく、ホームラン狙いになり、成果主義、大企業的保守主義が横行するようになり、新薬認証のペースは激減している。それでも、新興企業を中心に低分子で作る医薬から、タンパク質で作った抗体医薬というパラダイムシフトが進みつつあり、いずれはiPSなどの核酸医薬へ…という進化の流れは決して止まってはいない、とも著者は語る。
こなれた文章で、新書ながら、理系知識ほぼ不要で、広大な製薬業界の現実を紹介してくれる。中でも、メガファーマ化について、世の趨勢と思っていたが、「負の面が多い」という指摘は意外感があったし、説明も非常に納得させられるものだった。