著者はがんの免疫療法を受ける患者の会の事務局長ということで、免疫療法の宣伝か?と思いながら読み進めた。しかし、著者はあくまで冷静に、そして客観的な判断・評価に基づき、日本医療界のがん治療に対する提言を提唱していることに感銘を受けた。
そしてその提言は、単にがん治療のみでなく、他の疾病にも通じる普遍性がある。著者は物理を学んだ科学者のセンスを持つ実業家ということだが、医学に対する鋭い指摘をしている。つまり現代の医療の基になっているEBM(エビデンスに基づく医療)は、EBS(エビデンスに基づく科学)ではないというのだ。
医療に関する書物を読むと、例えば抗がん剤が効くという統計データはあるが、それがなぜ効くのかという科学的な証明がない。つまり医療は統計データを基になされているといことである。たとえば、同じ病気の患者に同じ抗がん剤を投与してもそれが効く人と効かない人が発生する。そしてそれがなぜだか分かっていない。従って、医学はまだ科学の領域に入っていないという。
私も理系の人間なので、この説にはとても納得がいく。この本は、患者予備軍としての、現時点で健康、もしくは病気の自覚症状のない人がじっくり読んでおいて、病気になったときの備えとしておくべき良書と思う。