こんな巡り合わせがあるのだろうか、と考えずには
いられないほど、残酷な状況におかれた著者が、
医学者として最後に放った輝きが、本書には満ちています。
この状況で、これほど冷静に書物を編まれた、
その精神力に驚かされるばかりです。
いくつもの印象的なエピソードや、言葉が散りばめられているのですが、
「…多くの男性は、みんな自分の時間を犠牲にしても自分の仕事を
まっとうしようとして毎日を過ごしているのではないでしょうか。
しかし、その何年にもわたる努力が、病気をしたとたんに水泡に
帰してしまうのです。」
脳腫瘍なんて、不摂生とかそういう特定の原因とは無縁の、
単に『選ばれてしまった』としか言いようのない病だと考えると、
私はこの言葉を、何度も読み返さずにはいられませんでした。