本書には医療機関における産業保健活動を進めるヒントが多様に盛り込まれている.これまで医療従事者の安全健康管理の進め方をまとめた総合的な手引きの類はなかった.本書の特徴は,1)熟考された章立て構成と豊富なコラム,2)アクションチェックリスト利用による現場仕立ての予防対策行動(アクション)の提案,3)産業保健良好実践例と実務ヒントの紹介,4)付録の充実,5)使い勝手のよいB5版,イラストのセンスのよさ等である.本書の編集スタイルには,監修者・編者らの先見性が随所にみられる.本書を紐解くことで初心者や専門家でも容易に医療機関における産業保健課題の核心に近づくことができる.病院の産業保健スタッフ等への良質の手引きとなっている.
本書の構成は,総論,感染症から守る,化学物質から守る,ストレスや疲れから守る,そのほかの危険有害要因から守る,医療機関での産業保健の実践の6章からなる.労働衛生管理は生物学的,化学的,物理的,社会環境に注目して健康障害予防が検討されるが,本書では医療機関における労働環境条件に即したこれらの有害要因を多岐にわたって取り上げている.巻末に索引もあり,個別の課題を拾い上げる際に有用である.総勢44名の執筆陣によるコラムの多さは,医療機関における労働者の抱える多様な健康障害要因が多いことを裏付けている.
医療従事者の安全・保健支援のためのさらに詳しい知見や対策は,この手引きからはやや物足りないと感じる項目もある.まずは,この手引きからアプローチの幅を俯瞰して,各領域の専門家の助言を得ながら進めていくのがよいだろう.