私事ではあるが、私は開業医である。ずっと、公的病院にて勤務医をしていたのだが、年をとるにつれ、肉体的・精神的苦痛が強くなってきた。とてもじゃないが、定年まであと20年以上、同じような生活はできないと考え、開業を決意したのである。
私の行動は、小林先生のいう「立ち去り型サボタージュ」の典型である。
私の同僚の勤務医も、お金が何とかなるのなら、開業したいと考えているものがほとんどであった。
医師だって人間である。肉体的にも、精神的にも安心して仕事をしたいと思っている。
当直明けもずっとふらふらになりながら働かなければならない現場、不幸な転帰をとった場合、たとえ不可抗力であっても、業務上過失致死に問われかれない世間の風潮(福島県の産婦人科医師の逮捕などその典型である)、高度な医療をしている医師ほど、強い緊張を強いられている。とてもじゃないが身がもたない。
あるサイトでは、自治体長に「うちの地域では,医療訴訟は禁止します.また,医療事故で医師を逮捕することはいたしません.」と宣言させてはどうかと言っていた。法的な縛りはないが、医師は安心して働けるはずだということである。
まあ、もっと医療環境が悪化しないと、マスコミも、社会(世間)もわからないんだろうなと思う。
ある一般人(医療関係者でない人のこと)記事で、医師へのクレームとともに、その文脈で「医療崩壊が進んでいる」と書いてあるのを見た。世間の理解度はこんなものなのである。
小林先生の前著「医療崩壊」もすばらしい本であった。一般人向けにかかれたこの本を読んで、一般の人にも医療の実態を知って欲しいと思うが、おそらく読むのはこれまた医療関係者ばかりだろうなと思うのである。
私はあまり、社会に期待できないでいる。