入試標準からやや難を中心に、難関大の理系学部では頻出だが教科書学習時には触れにくいテーマの入試問題を集め、周辺事項も含めて詳しく解説している。国公立の多くは医学部と他の理系学部で共通の問題が出題されるので、医学部に限らず難関国公立大学の理系学部を志望する人で、数学を得点源にしたい人に広くおすすめしたい。
解説の手法も一貫している。たとえば「等面四面体」というテーマを扱った問題では、まず三角比など高校数学の基本事項に忠実な解法を提示している。そして、四面体を直方体で囲むと連立方程式の解の存在に帰着できることなどを示し、そういった事項を念頭においた別解を紹介している。ただ、これだけだと発展事項に多く触れるだけで使いこなせない、いわゆる「頭でっかち」の状況に陥ってしまいやすいところを、うまく類題を解かせることでうまくフォローしている。こういった「脇の知識」をたくわえていくことにより、余裕をもって取り組める問題の種類が増え、見通しがよくなっていくという感じだ。
本冊で解説されている問題数は、'T・A・'U・Bで62題、'V・Cで57題。それぞれ同数の類題が対応しており、その解答が別冊になっている。これだけ分量がある中で内容的なバランスをとろうとすれば、やはり複数の著者・編集協力者間の連携が不可欠になるだろうが、そこは河合出版の得意分野。ただ煩雑なだけの問題も少なく、見通しよく進めていけそうな感じもする。
あと、この手の本は当たり前だが使い手を選ぶので注意しておく。少し読めば分かるが、教科書事項すらままならない状況から、医学部と名前のつくところに何とか滑り込もうという人向けの本ではない。難関大でも医学部でなければそれなりに勝負になる(つまり、標準問題の解法はおおむね頭に入っている)レベルの人でないと、解説を読んでも理解できず、かえって振り回されてしまうだろう。最後に、この本を使うとしたら夏休みか、せいぜい11月までであろう。センター試験も気になりだす中であせってくると、別解よりも点が取れる解法を1つだけ知りたいという意識が強くなってくるだろうからである。