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医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー)
 
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医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー) [単行本(ソフトカバー)]

津田 敏秀
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

なぜタバコやピロリ菌が発がん物質と言えるのか。目に見えない因果関係はどのように証明されるのか。公害事件で医学者の言動を問うてきた著者が、水俣病・タミフル・放射能など具体例を通して、「実験によるメカニズムの検証」という一見すると妥当な考え方に潜む問題点をつく。原因と結果を結ぶ科学の言葉がわかりやすく解説される。

内容(「BOOK」データベースより)

なぜタバコやピロリ菌が発がん物質と言えるのか。放射線被曝と、その後に発症したがんとの因果関係はどのように証明されるのか。公害事件で医学者の言動に潜む非科学性を問うてきた著者が、水俣病・タミフル・放射能など具体例を通して、「実験によるメカニズムの解明こそ科学」という一見すると妥当な考え方の問題点を示す。

登録情報

  • 単行本(ソフトカバー): 128ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2011/9/17)
  • ISBN-10: 4000295845
  • ISBN-13: 978-4000295840
  • 発売日: 2011/9/17
  • 商品の寸法: 19 x 13 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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17 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
本書は120頁ほどですので集中して読めば数時間で読み終わります。
一言でいうと疫学の観点から因果論を哲学的に少し掘り下げた内容です。

ピロリ菌の感染は94年に国際がん研究機関で「明らかに発がん性がある」に
分類されましたが、日本の学者は「動物実験で確認されていない。」と否定的に
受け止めました。著者はこの日本の反応の方が間違っているとします。
疫学で因果性が明らかなのに、動物実験などでメカニズムを解明しない限り
因果性がないとの考えは誤りとします。
これは「部屋のスイッチとその部屋の電灯の因果関係を、配電図を見なければ
納得できないと主張する人はほとんどいない。」(79頁)との見方です。

同じことを要素還元主義の誤謬としても論じています。要素に還元する以前に
因果性が明らかなのに、さらなる要素に還元しようとする誤りです。
その例として森永ヒ素ミルク中毒事件や水俣病事件にも言及しています。
これらの事件では要素還元主義の誤謬に陥って、メカニズムの特定ができるまで
因果性を認めないとして犠牲者が増えた事情があると指摘します。
この部分は啓蒙書として非常にためになると思います。

著者はヒュームの因果論をとくに重視します。経験論を貫くと因果は「第1の
事象のあとに第2の事象が常に随伴する」で尽くされるはずです。ヒュームは
科学法則も経験的知識に過ぎないとします(哲学では通説ですが)。ヒュームは
因果から必然の要素を追放し、因果とは習慣のようなものとします。
本書のヒューム論はこれとは少し異なるところが、ちょっとひっかかります。

さらにそこから観察可能な同種事例を重視するという疫学につながります。
最後の20ページは疫学の初歩的な説明で締めています。
わずか数時間で読める本ですので、読んでおいて損はないです。
ヒュームを基点とした著書としては自分で考えてみる哲学
が良いと思います。
このレビューは参考になりましたか?
12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By my_rev
さまざまな医療や社会問題のなかで、疫学的手法により(科学的に)原因が明らかにされていても、まだミクロの世界の原因物質や反応のメカニズムの解明が不十分などといって受け入れられないことがある。その受け入れられてこなかった理由が、水俣病や公害問題など身近な問題をあげながら、哲学の見地から平易な言葉で解説されていて、とても読みやすい。
医学や保健学などの分野の初学者におすすめの良書。また、時間をかけずに疫学と科学哲学を再考できるので、これらの分野の研究者にもおすすめしたい。
このレビューは参考になりましたか?
7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By つくしん坊 トップ500レビュアー
食中毒、公害、発がん物質など、何らかの「原因」が「結果」(病気や死亡)をもたらした事象について、新聞やマスコミで報道されない日はない。その場合、科学者でさえも原因と結果の関係(因果推論)に関する誤った認識の下で、世の中を惑わせたり、被害の救済などの具体的な被害をもたらすことが少なくない。本書は、このような因果推論に関するわかりやすい入門書である。

本書のポイントをまとめると次のようになる:(1)因果関係は目に見えず、因果推論に関する理論なしでは、因果関係をまともに描くことが出来ない。このため、科学者でさえも間違える。(2)特に多い間違いが、要素還元実験なしでは因果関係が証明できないという思い込みだ。医学の場合、疫学的証明が十分因果関係の証明となりうる。

本書では、科学者でさえも間違えた(あるいは意図的に誤魔化した)例として、ピロリ菌と胃がんとの関係、タバコと肺がんとの関係、腸管出血性大腸菌O157中毒事件、森永ヒ素ミルク事件、水俣病事件、和歌山ヒ素カレー事件、タミフルなど豊富な事例が取り上げられ、因果関係の理解を深めるのに役立つ。著者は疫学が専門であるが、内容は科学哲学にまで及び、考えさせられることが多い。本書は、コンパクトな内容であるが、最新の研究も紹介されていて、入門書であると同時に、さらに自分で調べるための手引書ともなっている。

なお本書では、東京電力福島第一原発事故に伴う放射能拡散の被害をどう評価するかについては触れていないが、インターネットで著者の見解が発信されている(http://smc-japan.org/?p=1310)。本書も参考にすることで、低線量被曝について一人一人がどう考えればよいかの大きなヒントが得られる。
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