医学博士・沓掛伸二先生のこの著書はひと口に言うと「人間臭
い」本です。尊父は海軍医を勤めたあと戦後、相模原の地で内科医院を開業し、
どのような患者でもわけ隔てなく診察し、家計が苦しい患者からは受け取らない
ため「赤ひげ先生」と言われるくらいの名医だったと言い伝えられています。
その血筋を引いたのか、沓掛医師もヒューマニズムあふれる先生で、診察に
当たって一番大事にしているのが問診です。触診、眼診を含めた問診について、
沓掛先生は「問診で50~60%は決まってしまう」 (「大切な問診その1」)と
書いています。今の時代、大きな病院になるほど、患者を診ないでパソコンを見
て診断する医師が増えていますが、沓掛先生は、「人間が人間を診る」診察を大
切にしています。このために「かかりつけ医」の大切さも説き、 「病気を診ず
して病人を見よ」とも言い、来院できない患者には「往診」もしています。
著者も言っているように、この本は「決して家庭医学の本を書こうとか、病気
の解説をしようというつもりで書いたものではない」内容で、インフルエンザ、
がん、C型およびB型肝炎など病気についても触れていますが、「医療というも
の、それに携わる人間の考え方を出来るだけ理解して頂きたい気持ちで書いた」
ものです。
それが即ち「医の術」であり、患者がその医療のあり方を理解すれば「患の
術」になるという思いから、この本のタイトルがつけられました。言葉を換える
と、「人間が人間を診る」「人間が人間に診てもらう」という、医療のあり方の
基本を説いたもので、機械化された高度医療そのものを否定しているわけではな
く、自らの手で及ばない治療については大学病院など大病院との信頼関係に基づ
いたネットワークで即応しています。それだけに正確な診療が求められ、その診
断は医師と患者の「術」で成り立つという「医療の大切な基本」を説いたのがこ
の本で、沓掛先生が診療現場でこれを実践しているため、それが口コミで伝わ
り、来院する患者が後を絶たない日々が続いています。