インパクトのありすぎるタイトルと表紙に、ドキドキしながら読み始めました。内容は予想通りに耽美的でしたが、思ったよりずっと濃密で繊細な世界が描かれていました。
冒頭で語られる子供たちの隠れん坊の場面が印象的で、登場人物三人のその後を象徴するものになっています。納戸に隠れることで現実を遮断し、夢想の中に安らぎを見出すことを覚えてしまった風宮。そんな彼に執着を感じながらも、安全な世界から足を踏み外すのが怖くてどうしても引き戸を開けない和輝。誰にも見つけてもらえず自分では出ることのできなくなった納戸から、いつも風宮の手を引いて外に連れ出した祐一郎。
祐一郎は、閉所にこもって夢想に耽ることに取り憑かれた風宮を守っているようでいて、実はそんな風宮自身に異常に執着し、自分の腕の中という「匣」から彼が出て行こうとすると激昂して強引な手段で阻止します。ですが、彼に服従を強いられているように見えていた風宮のほうが、実は祐一郎を虜にして支配していたのではないかと物語の結末で二人は気付くのです。
風宮と祐一郎はお互いにとって唯一無二の理解者であり、共犯者でもあります。二人の関係は他人が入り込む余地のない密室的なもので、濃密な甘さを湛えています。一読後、重苦しい甘さに軽い胸やけを感じましたが、後を引く味わいがあって、何度も読み直してしまいそうな気がします。
攻めの祐一郎は見事な現実対処能力を備えた立派な大人でもあって、完璧に風宮を守る盾となり、理想の「匣」とも言うべき家を風宮のために建てることさえします。そんな攻めの姿に、『色重ね』や『海に還ろう』の攻めたちの姿が重なりました。