本書の初版が朝日ソノラマから出版された1982年においては、梅本弘氏の『雪中の奇跡』もまだなく、本書がフィンランド軍の戦いについて言及した唯一の本だった。個人的にもフィンランド空軍の奇跡的とも言える戦いぶりに感銘を受け、Military Maniaの道に誘われるきっかけとなった本の一つといえるので、この度の復刊は感慨深いものがある。
本書で語られる戦いの魅力は、ただフィンランド軍が活躍したというものではない。フィンランドこそは、激動の国際関係に翻弄されながらも、ソ連の侵略から自力のみで祖国を守り抜くことに成功したまさに勇戦敢闘の稀有な国家なのである。その歴史は活躍した戦闘機の機種にも反映されている。1940年の冬戦争においてはオランダ製のフォッカーD21が活躍したが、1941年からの継続戦争においては、わずか40機の米国製旧式機F2Aバッファローが祖国を守った。バッファローは太平洋の戦場で零戦にバタバタと落とされた旧式機であるがフィンランドにおいては「空の真珠」と呼ばれている---。そして、継続戦争後半においてはソ連が連合国側として参戦したため、やむなくナチスドイツと同盟し、空軍はメッサーシュミットBf109の供与を受けて戦ったのであった。
国家のドラマ、個人のドラマが織り成す物語は、森と湖の国を舞台として戦われた。凍結した海を歩く歩兵の群れに上空から銃撃する戦闘機、タイヤではなくスキーをはいて凍結湖から離陸する戦闘機---と非常に絵になる光景が目の前に浮かぶのもまた嬉しい。