著者はあとがきに「軍事情勢を考えるにあたっては、縦糸に当たる「軍事知識」と、横糸にあたる「国情の知識」の組み合わせが必要であることを常々感じてきた」と書いている。本書は、東アジアに位置する北朝鮮、韓国、中国、台湾、日本、それに加えて、この地域と深い関係をもつロシアとアメリカの軍事力と政治のカラミを、データを示しながら分析し論じた本である。煩雑とも思えるデータの裏付けがあってこそ、論旨に説得力があると感じた。また、日本のマスコミや政治家があいかわらずの冷戦感覚でいることを揶揄していることを含めて、朝鮮半島の統一、中国−台湾の統一、アメリカと中国の関係、日本と中国やアメリカの関係等に関する軍事面からの著者の分析には妙に納得させられてしまう。国際政治の世界が、イデオロギー対立の冷戦時代が終わり、現在では、経済のつながりに基づく関係が基本となっており、北朝鮮の暴発か崩壊でもない限り、この地域での戦争行為はない、という主張かと思う。それはそれで論旨は明確である。ただし、読み終わっての素朴な感想は、核兵器を持つ意味は使うことではなくて持っていることで生ずる他国からの攻撃抑止であるというが、非武装中立はありえないとしても、それではなぜ、各国は多額の軍事費をついやして使わないための軍備の拡充に努めているのか、軍事評論家である著者からの説明は本書にはなかった。