反北一色の国論の中、北との交流推進という異論を訴え続ける著者の存在は、筋が通っているし、貴重だと思う。また、伝聞情報がまかり通る北報道で、実際に北に行って見聞を深めた著者の記録。「国交回復で日本も儲かり、北の経済、民生も豊かにする」「『拉致被害者は死んだ』という北の結論は覆らない」など本文中に出る、著者の政治経済への展望に賛同する所はほとんどないが、(「北の素顔」と帯にあっても、実際は外国人用に飾り立てたショーウインドウに過ぎないと思われるが)あまり見ることのない北朝鮮の芸術や、食、教育などの活動状況(あくまで北の公式見解に沿ったものだが)を報告する。北に好意的な論調が皆無になった我が国で、こうした北の日常や、一般人(平壌に住むのは特権階級だが)への思想統制状況を知らせる報道自体がほとんどない中、厳しい撮影規制に耐えて、多くの写真も掲載した本書には、今の北朝鮮、平壌の一面を知らせる一定の価値がある。
本書は、いわゆる北礼賛本ではなく、客観性は担保されている。金親子に敬意を払わせようとする点や反北世論で叩かれている著者に向かって宴席で日本の反北論調を攻撃する所、金親子の有害無益な経済産業政策に批判的な部分もある。しかし、多くの情報が発信する情報全てがプロパガンダという「北政府の公式定義」に依拠した、と書かれている。プロパガンダを読み取る努力をしないと、誤った情報を伝える危険がある。真意を解読する努力をすべきではなかったろうか。読み手も宣伝工作である可能性を意識して読むことを求められる。ちなみに、p98で「マスゲームは和製英語で英米人には通用しない」とあるが、英語版ウィキペディアでは「mass games」で立項されている。