北斎の匠(たくみ)の技に、「こいつは、凄い!」と息を呑んだ画集。江戸の天才絵師の描いた妖怪画・化け物画の数々が、「錦絵・肉筆画」「読本挿絵」「北斎漫画」「化物和本草(ばけものやまとほんぞう)」の四つの部屋に分けて展示された一冊です。
なかでも、「地」と命名された「錦絵・肉筆画」の章に、今にも絵が呼吸しはじめ、動き出すのではないかと思わせる妖怪画がありました。『生首図』『幽霊図』『雷神図』『怒涛図 1』が格別のもの凄さで、圧倒されましたねぇ。とりわけ、見開き二頁にわたる『生首図』(部分・拡大)が目に飛び込んできた瞬間のインパクト、ぎょっと息を呑まされた印象が強烈。画狂人・北斎の烈々たる気合と、孤高の高みに達した芸の凄さを、ひしひしと感じました。
「地」「水」「火」「風」と名づけられた四つの展示場に入る前に、冒頭、「北斎の妖怪画」と題した京極夏彦の案内文が掲載されています。アスリートの引き締まった身体を思わせる、緊密で、凛とした文章のたたずまい。本文7頁ほどの分量ですが、読みごたえがありましたね。
縦263ミリ、横186ミリの画集の表紙を飾るのは、『「百物語」こはだ小平二』の錦絵。「百物語」シリーズではこのほか、『お岩さん』『さらやしき』『笑ひはんにや』『しうねん』が展示されています。それぞれの絵の構図が、もう、絶妙の巧さで魅せられてしまう。特に気に入ったのは、『さらやしき』のお菊の亡霊の「口から、ふーっ」かな。