緒方洪庵浪華の事件帳「禁書売り」の続編で、ともにNHKテレビドラマ「浪花の華」の原作である。どちらの本にも、巻末に詳細な参考文献一覧が掲載されている。普通の小説本にそのようなことはない。まるで論文並みだと驚いたが、作者が阪大大学院博士課程単位取得済みの日本近世史専攻の学者だと知って納得した。
だからと云って、決して堅苦しい本ではなく、とても楽しめるエンタメ小説である。ただ、時代背景、人物、事象、当時の街並みなどの考証がしっかり出来ているということだ。面白いというだけでなく、1800年代前半頃の商都大阪のおおよその状況を知ることができる。
ドラマと比べればやはり原作の方が面白い。テレビは、時間を短く、また、視覚的に分かりやすくするために、かなり思い切った変更が加えられている。結末は、同じになるにしても、味わいが違う。人物なども、原作では威厳のあるきりっとした美男子だと思い描いていた人(章ではない、念の為)が、テレビでは案外軽そうな美しくもない人でがっかりしたりする。
主人公章とヒロイン左近、それから師の中天游、そして周辺の人物もよく描かれている。作者が女性だけに情緒的で女性にしっとりした色気が感じられ、章と左近のプラトニックで初々しい若い男女の愛が全編を通じ物語をピンク色に染め上げている。
なお、重箱の隅をつつくようで恐縮だが、所々で京都弁と大阪弁が混同されているように思えたが如何であろうか(例えば、「知らはらへん」と「知りはれへん」)。