「むすび」にあるように、現在国際的に隠然たる勢力と
なっている、原理主義的な国家論者の先駆者として北一
輝を捉ることを試みています。ただし、「徹底せる個人主
義者」(松本健一『北一輝論』)という通説に対し、「最終
的には個人主義を否定」という見方には、最初は戸惑い
ます。もっとも、こちらも北一輝といえば先の松本氏や渡
辺京二氏の書いたものに負ったままなので、反省すると
ころはあります。
昔、坂野潤治さんに「情念派」と面と向かって言われた
ことがあります。そのときはピンとこないところもありまし
た。でも、明治維新後の精神史の文脈で彼を捉えようと
するあまり、彼の内在的な論理展開の解析が疎かになっ
ていたのは事実(特に『日本改造法案大綱』との関連で)
です。
本書でのプラトンと北一輝、そしてニーチェと北一輝とい
う問題の立て方は新鮮だったし、啓発もされました。もう
一度、彼の著作集を虚心に読み直してみたいと思いまし
た。