私は歴史の本は好きだけど、時代小説は読まない。なんか地味で堅苦しくてオジサン臭くて…。
でも、この人のは面白くて読んじゃう。
面白さその1。ウソっぽくない。
無名なんだけど面白い人物を取り上げる。まあよく捜してくるもんだといつも感心してます。今回のも浦賀の奉行所に勤めていた与力とその子供たちが主人公で、脇役が榎本武揚。そういう人たちを取り上げても、話が地味にならずに、ポンポン進んでいく。だから読みはじめるとイッキ読みになります。
幕末海軍が得意分野というだけあって、船のことや、航海のこと、海の上での戦闘のこと、いろんなことが細かく正確に書かれている。作り事っぽいことが書いてあると、読むスピードがそこで落ちるんだけど、この人のは読んでて真実味を感じるから、途中で止まらなくなるわけ。
理由2。鳥肌2回保証。
登場したときは悪役だけど、後からじんわりと味を出す人物が登場する。『群青』という小説では勝海舟が要領いいだけの、ヤなヤツとして描かれているんだけど、後半から勝の真意が明らかになって、グッとこみ上げさせてくれる。
この『北の五稜星』でも星という侍や、榎本武揚がそういうふうに描かれていて、中盤でまず一回私は鳥肌モンになりました。話が順を追って流れてくだけじゃなくて、ちゃんとシカケが準備してあるのね。一度ハマると、クセになる快感ですわ。
理由3。チョンマゲ臭くない。
時代小説だから侍の名誉とか、武士のやせ我慢とかも出てはくるけれど、そんなことよりも登場人物が命がけ、ホントに必死になって動き回る姿が描かれていて、それが面白い。「はあー、昔は大変だったのねえ」じゃなくて、「コイツなんだか俺と似てるじゃん」という気分になります。
この小説を読んで面白かったら、同じ時代を舞台にした『群青』がオススメだね。