この作品はおそらく著者の代表作とはならないだろう.重厚なテーマで重く心に突き刺さる「永遠の仔」,家族という存在を様々な視点から鋭く描いた「家族狩り」の両作品には内容,分量とも遠く及ばない.それでも私はこの作品は大好きだ.
今の日本で,本当に大切な,皆が切実に考えなければならない問題は何なのか.文盲なC調系のマスコミに多くは望まない.それにしても,今現在報じるべきことは,IT社長の動向や,タレントだか政治家だかわからないような人々の言動や行動ではないだろう.また,取って付けた様に社会に潜む闇を第三者的な立場から論じた所で,一体それが何になると言うのか.
天童荒太はそんな私の持っている不満に対して一つの回答を示してくれた.完全な回答ではなく,明確でもないが,とても優しく,大切な回答だった.