発売当初に読み、以来何度も読み返している。
当時母親を亡くし海外に引越し、仕事をなくしと、いわゆる浅田文学テーマのひとつであるクスブリになって先が見えなくなっていたとき、この一文に救われた。
「人生にも”ちょいと場を見させてもらいますよ”と宣言して、勝負を横目でにらむ時間は必要なのだ」
たかだかアウトロー文庫本である。なのに文学は人を再生させる力があるのだと唸った。その後に続く蒼穹の昴、霞町物語、天国への百マイル等々、さらに唸りっぱなしである。
おかげさまで私は”鉄火場から目を背けることなく”精進でき、復職できた。
翻って自分の仕事ぶりは、こんなにも人に力を与えることができるのか自省するばかりである。
このレビューは浅田さんへの10年以上思いを重ねた恋文にも似た御礼状である。浅田次郎さん、本当にありがとうございます。