勝海舟の父親である勝小吉を主人公とした捕物帖である。
「勝海舟の父親?」と不審に思う人も多いだろうが、乱暴者ではあるものの、生きたいように生きた人物であったらしく、けっこう人気があるのだという。
本書には短編8本が収められている。実はシリーズの第一作は「檻の中」という短編で、これは『黒牛と妖怪』に収録されている。本格的な風野ファンなら、こちらから読んだ方がいいかも。もちろん、本書だけで読んでもまったく問題はない。
勝小吉は若い頃に乱暴のあまり、座敷牢(のようなもの)に3年間も押し込められた経験を持つ。本書では、そのころを取り上げ、知り合いの話を聞いただけで牢屋の中の小吉が事件を解決してしまう、いわば安楽椅子探偵のような趣向になっている。解決には、まだ赤ん坊の勝海舟も噛んでいたりするところが面白い。
初期の作品だが、のちの作風が色濃くあらわれた一冊であった。