この本は、高岡英夫の運動科学、中でもDS論を軸に、現代格闘技界のスターたちのパフォーマンスの中身を解説したものである。
11人のDS分析はそれぞれに興味深いのだが、私としてはこの本の重要な点は、レビュータイトルの通り「はじめに」にあると考えている。
具体的に言うと1ページの最後から2行目から3ページの最後から2行目まで。ここが重要だと考えている。
なぜか。高岡英夫の運動科学、なかんづくDS論については難解、理解不能という言われ方をしてきており、何をどう位置付ければこの理論を理解できるのかに読者は頭を悩ませてきたと思う。
それが今回、一般の科学者、論者の語るパフォーマンスの分析と、高岡英夫が語るDS論からのパフォーマンス分析はどう違うのかが、大まかにだが説かれているのだ!
ここは重要である。どんな優れた理論も、それを世界全体の中でどう位置付けるかが明らかにならないと、その真の役割は分からない。何を説いているかが分からないという事だ。
今までのDS分析の書では「今までの科学では、パフォーマンスの本質は捉えきれない、DS分析こそがその本質を解き明かす」という事は何度も語られてきた。だがそこから先はもう具体的なDS分析に入ってしまい、今までの科学がどう限界なのかはあまり語られなかった。それが今回「今までの科学が説いてきたのはこういう部分で、運動科学のDS論ではそこに抜け落ちたこの部分を説くものである」という関係を説いているのである!
私はこの部分こそが、この書の隠れた要点であると感じる。
実際にその部分を読めば、語彙自体は誰でも理解できる平易な言葉で語られている。だがしかし、この内容を語るために、どれほど高岡英夫が研鑽(南郷継正的に言えば「論理的研鑽」)を積んで来たか。私はこの部分を読んだ時に猛烈な興奮を覚えたものだ(あまり共感してもらえない興奮だが)。
高岡英夫の世界観については「「身」をゆるめ「心」を放つ」。そして身体意識論の基礎「意識のかたち」と身体意識の構造論たるベースボールマガジン社の3部作、身体意識論と対を成す「究極の体」、身体意識論と究極の身体論の更に根底をうがつゆる論「「ゆるめる」身体学」。これらをよむことで、読者はこの本をより深く理解できるであろう。
本書は「合気・奇跡の解読」の後半、「DS が解く達人のメカニズム―現代武術8つの極意」、「高岡英夫の超人のメカニズム」、「スーパースターその極意のメカニズム」、「天才の証明―天才・英雄・名人の〈能力の設計図〉」等、個人のDS分析書の流れに連なる作である。
この本を読んで、具体的なパフォーマンス分析の世界に遊ぶもよし、更なる理解を求めて基本書に学ぶもよし。実際に著者のセミナーに参加できれば面白さ倍増は間違いの無い所である。
なお、このレビューの筆者はいわゆる高岡信者であるが、運動研の人間ではない事を一応断っておく。