*【以下結末に触れています】
1951年冬。インディアナ州の小さな町ヒッコリーの高校に、新しいバスケット・ボール部のコーチ(ジーン・ハックマン)が赴任してくる。小さな町にとって、バスケット・ボールは、単調な生活の中での最大の関心事だ。彼の破天荒ともいえる指導方針は、町の住人との衝突などを惹き起こすが、それを乗り越え、たった6人だけの弱小チーム(のちに、天才的な腕の選手が入部し7人となる)を州大会出場にまで導く…。
フットボールの名門、ノートルダム大学に入学した、小柄なフットボール選手のはかない活躍(たった27秒間の試合出場)を描いた『
ルディ [DVD]』で、「スポ根もの」に腕の冴えをみせる監督として、映画ファンの心に名前を刻んだデヴィッド・アンスポーが、その7年前に手がけた隠れた小品。現代ハリウッド映画界の名優といっていいハックマンの抑えた演技(試合では、すぐにカッと沸騰して度々退場処分になるのだが…)の素晴らしさとともに、インディアナの小さな町の寂しく静かな(と同時に美しい)自然の中に描かれる爽やかな「スポ根もの」の秀作だ。テーマにおいて、『ルディ』の原型、あるいは、ほとんど双子ともいうべき相似を持っている。アンスポーの「スポ根2部作」といっても差し支えないだろう。
本作では、バスケット・ボールに材を採っているが、アンスポーの追い求めるテーマは変わりがない。劇中、バーバラ・ハーシー扮する教師が、優秀な生徒ジミーをバスケット・ボールだけに熱中させる危険性を説くと、ジーン・ハックマンのコーチがこう応える。「たった一瞬でも栄光の中にいる者は神だ」たとえそれが、どんなにはかなく、短い時間での栄光であろうとも、それに向って全身全霊を賭けることこそ大事であり、そして、決して恵まれた資質がない者(原題の"Hoosiers"とは「田舎者、不器用な連中」という意味であり、インディアナ州のあだ名でもある)でもその栄光を手にすることはできる―それがテーマである。単純と言われてしまえば、あまりに単純、古めかしいと言われてしまえば、あまりに古めかしい「アメリカン・ドリーム」だ。その具現の対象が、本作ではバスケット・ボール、『ルディ』ではアメフトというアメリカの国技ともいえるスポーツなのは、当然といえば、当然なのだろう。
しかし、その愚直な(そして時代遅れの)アメリカン・ドリ−ムを描くアンスポーの演出は確かで力強い。そして爽快だ。とりわけ、バスケット・ボール試合の高揚感溢れる演出が素晴らしい(ジェリー・ゴールドスミスの音楽も熱狂を盛り上げる)。選手たちとコーチが、狭く暗い地下ロッカールームから階段を昇り、歓声に沸く体育館へと向う姿を、手持ちキャメラでワンカットで捉えるのだが、閉所から広い空間への開放感と共に、選手たちの緊張と心臓の鼓動…等、生理が伝わってくるほどだ。続く、試合のシーンでは、ゴールを決めた選手たちが嬉しさのあまり、コーチのもとに駆けつけるのだが、ここでも手持ちキャメラは、感極まったという感じで、客観的な立場を忘れて、ほとんど「第8人目の部員」のように、他の選手たちと一緒になってコーチのもとに駆け寄り、はしゃいでしまう。こういった演出による生々しい臨場感が、この作品のただならぬ高揚感に結びついている。ヒッコリー校が勝つことはわかっていながらも(ご都合主義の出来すぎなゴールも許そう!)、思わず手に汗握らされ、気持ち良くカタルシスへと引き込まれてしまうのだ。
試合が終わって場面が変わると、キャメラは静かに、現在のヒッコリー校の体育館の壁に掛かる、「52年インディアナ州バスケット・ボール大会優勝」の大きなパネル写真に寄っていく。誇りに満ちた笑顔を浮かべたコーチと選手たちの集合写真である。そのパネルの下では、そんな遠い昔の出来事など知る由もない小さな子供が、無心にバスケット・ボールをついている。6人のHoosiersは、アンスポーによって、まさに、一瞬の栄光とともに永遠に封じ込められたのだ。類型的だが、静かな余韻を残す美しい幕切れである。
余談になるが、本作に、1人バスケット・ボール選手にはあまりに向いていない背の小さい選手が出てくる(本人も自嘲気味に「マネージャーのようなもの」などと言う)。アンスポーのやさしい演出によって、彼にも「一瞬の栄光」が与えられるのだが(子供のように、ボールを下から放り込むようにして、ゴールを決めるのだ!)、この「恵まれた資質を持ち合わせていない選手」にスポットを当て、テーマをさらに純化、深化して作られたのが、もう1人の"Hoosier"ルディ・ルティガーの物語であることは言うまでもない。
本DVDは、1999年にカルチュア・パブリッシャーズ、2003年にユニバーサルから発売されたものと同一マスターを使用したもの。おそらくマスター・ポジあたりからSDテレシネされたマスターのようだが、MGM/UA(日本では20世紀フォックスが販売)らしく、丁寧なレストアはされておらず、あまり精細感のない画質だ。しかし、許容できる範囲だろう。音声も明瞭だ。特典は、予告編のみというあたりも、いかにもMGM/UA作品らしい。