日本で最も知名度のある文学賞、芥川賞と直木賞。
その受賞候補作が発表される時期に、
この人口に膾炙する国民的文学賞の受賞作の行方を
分析するイベントが〈文学賞メッタ斬り!〉
と称して行なわれています。
その予想師を担当されているのが、
こちら本の著者書評家、豊崎 由美さんです。
膨大な読書量と文学への愛ゆえだと思いますが、
その語り口は歯に衣を着せぬ、いわゆる毒舌とも。
さてこの一冊は
14歳の読者に向かって語られる読書案内
ですが、大人でも十分楽しめます。
むしろ大人の方が良いのでは?とすら思います。
このでたらめで混沌とした世界において
私達はいかにタフに、
自分自身の言葉を持って生きるのか。
建前だけではなく本音で、
この世の中と向き合おうとした時、
一体、どんな物語と出逢えばいいのか?
死や、暴力や奇人などともすれば避けて、
見て見ぬ振りをして通り過ぎたいようなものを
真っ向から見据える、実に見事な物語達を、
これでもかと矢次に勧めて下さいます。
ちょっと待って下さいよ、
そんな沢山読めないですよ、
と言っている暇はありません。
ふだん、決まりきった作家しか手に取らない私には
確かにその書籍と作家の情報量はなんとも豊かで
丁度、滅多に会わない親戚の家で
「久しぶりに来たんだから」
と振る舞われるテーブルに収まりきらない
御馳走にも似ています。
それにつけても著者の語り口は
古今東西を巡って自由奔放、縦横無尽。
我々読者は、優れた物語の恩恵に預かる事で、
世界を生き直すことができる。
それをきっぱりと断言してくれます。
それにしても「ただ本を紹介する」だけなのに、
こんな見事なエンターテイメントになるとは!
今まで読んでいた書評ってなんだったの?
と思ってしまいます。
この本で紹介された「物語」達が存在すると知った世界は、
例えれば、海路を確信した船乗りのような気分になりました。