『勝つために戦え!』というタイトルの本は2011年4月時点で3冊出ており、アマゾンのレビューでは、機械的な問題か人為的なミスなのかは分かりませんが、それぞれのレビューが独立しておらず、混乱状態になっているようです。
このため、3冊の違いと、それぞれのレビューを書かせていただきます。(3冊分のレビューのため長文ですが、ご了承ください。)
出版年順に並べると、以下のようになります。
『勝つために戦え!』エンターブレイン 2006年03月 発行 ISBN 978-4-7577-2668-0
『勝つために戦え!監督篇』徳間書店 2010年02月 発行 ISBN 978-4-19-862916-8
『勝つために戦え!監督ゼッキョー篇』徳間書店 2010年09月 発行 ISBN 978-4-19-863007-2
(簡便のため、ここからは3冊を『無印』『監督』『ゼッキョー』と略します。)
『無印』は、当時メディアなどで「勝ち組、負け組」が流行語となり、とりわけ若者がこのどちらに属するのかを気にする気風を受け、映画監督である押井守に「勝敗論」を語ってもらおうという趣旨のもと聞き手・野田真外氏で『エース特濃』03年6月号から連載が開始されました。連載誌休刊後、web連載になり05年12月に連載終了、書き下ろしを加え06年3月にエンターブレンより単行本化されたものです。
内容や語り口は、当時押井監督が熱中していたサッカーやドラクエの勝敗論を語ることで、読み手に「真の意味で『勝つ』『負ける』とはなんなのか」を悟ってもらうという形式になっています。
そのため、映画について語ることが少なく、テーマは勝敗論で共通しているのですが、他2冊とはまったく異なる内容となっています。
押井監督独特のスポーツ観やゲーム観が惜しみなく語られ、とても興味深いのですが、内部事情に詳しい映画について語った他2冊と比べると、門外漢の感は否めず、多少見劣りします。
ページ数、装丁、紙質、文章構成も他2冊異なり、個人的には読みにくいと感じました(紙が分厚くごあごあ、野田さんと押井監督で書体が違ううえに書き出しの位置も違う etc)。
押井監督のファンならおもしろく読めるのではないでしょうか。
星をつけるなら、以上をふまえて★★★とさせていただきます。
『監督』は、「映画監督の勝敗論に絞って前著の続編を」という依頼のもと、雑誌『COMIC リュウ』にて聞き手・野田真外氏で08年4月に連載開始、09年7月に全15回で連載終了したものに、鈴木敏夫プロディーサーとの対談と、「キャメロン補講」が加えられ、10年2月に徳間書店より単行本化されたものです。
内容は、各章ごとに話題とする映画監督が決められ、「その監督にとっての勝ちとはなにか」「はたして勝てたのか」などを語っていきます。宮崎駿からゴダールまで、国籍・年代・ジャンル不問の痛烈な押井節が展開され、まさに職業監督・押井守の本領発揮です。実際に面識のある監督についても大いに批評していますので、読んでるほうも緊張します。
『無印』とはまったく趣が異なりつつも、「勝敗論」という軸はぶれていません。
ページ数も多くなり、文章構成等も改善されたと私は思いました。
異論はあれど、映画好きなら読める内容だと思いますので、評価は★★★★とさせていだきます。
『ゼッキョー』は、完全書下ろしで『監督』の続編として徳間書店から10年9月に単行本化されたものです。聞き手として新たに編集部の大野氏を加え、前回名前の挙がらなかった監督の勝敗論を語っています。
内容は、7章構成になっています。
第1章 監督仕分け 海外篇
第2章 海外監督篇(上)
第3章 海外監督篇(下)
第4章 監督仕分け 国内篇
第5章 国内監督篇
第6章 みんなの勝敗論
番外 勝つために戦え! スタッフ篇
体系的、というと大げさですが、前2作と比べると、章立ての段階からかなり考えて作られているように感じます。聞き手の大野氏加入の効果か、前回よりもさらにディープかつ詳細に押井監督が語り、シリーズ最高の内容だと思います。よって評価は★★★★★とします。
シリーズ全体の評価(全巻を定価で買ったときの評価)は、★★★★といったところでしょうか。3作とも同じレビューが表示されてしまう現在、星付けはこれに準じて付けさせていただきます。以上、長文を失礼しました。