著者にとって哲学は、何か特殊な学問ではありません。生きているとはどういうことか、自分であるとはどういうことか、誰にも共通の当たり前のことを考えることです。
ただし、当たり前のことを考えるとは、別の言い方をすれば、自分がそうだと思い込んでいることを疑うこと。これが簡単なようで、実はけっこう難しいから、普通の人、俗世間の人はなかなか真理に到達しない、と著者は考えている(らしい)のです。
そんな著者が吐き出す言葉には、「あんたたちに何が分るっていうのさ」というような高みから人を見下すような響きがあります。
そんな高慢な著者の本ならすぐに閉じてしまえばいいように思うのですが、言っていることがいちいちごもっともで、言葉の刃がこちらに降りかかってくるかもしれないのに、ついつい先へ読み進んでしまうのです。
曰く、
一回きりの人生、思いきり楽しまなくちゃ損だというのは、ある意味
では正しい。しかし、快楽が目的化すると、人間は馬鹿になるのであ
る。
JR西日本の脱線事故についてインタビューを受け、言ったのは、
いつものことながら、マスコミは大事故が大好きである。(中略)
そうやって、盛り上がって、酒を飲んだのはあんた方も同じでしょ
うが。
私は思った。やあ今日は特ダネがとれたと、あんた方も酒を飲んだ
んでしょうが。
他人の不幸を酒肴にする、いやそれを生活の糧にしているという点
では、JRよりもタチが悪い。JRが事故を起こしてくれたから、あ
んた方の仕事は成立しているんでしょうが。
いやいや、なんと強烈な御仁でしょうか。
反発しながらも、ついつい最後まで読んでしまう。本書は、そういう本です。