荻原重秀と言えば、主に新井白石の「折たく柴の記」で罵倒された事により、元禄の貨幣改鋳の悪人として知られていた。私もそう思っていた。本書はそうした通説に対し、少ない資料の中で、荻原重秀の真価を問い直した力作である。
重秀の信念が素晴らしい。「貨幣は国家が造るもの、たとえ瓦礫であっても行うべし」。即ち、この時既に"名目貨幣"の概念を確立していた訳で、経済観念から言えばヨーロッパより200年進んでいたと言う。この他、元禄検地、佐渡経営、奈良の大仏修復などに尽力した事が紹介される。著者の地道な努力は評価されて良い。
例えば私が学生の頃、田沼意次は賄賂政治家として悪人の典型のように習った。しかし、現在では積極的な経済政策を行なったとして評価する向きもあるようである。本書は歴史上の人物を一方的な見方で評価する事の怖さを教えてくれる良書であり、今後もこうした本の刊行を期待したい。