北海道大学図書刊行会の自然史シリーズの一冊.主に日本および東アジアが主題の動物地理学を題材にした論考集である.最近の分子遺伝学的な分析と,系統分岐に関する理解や技術の進展を背景にこれまでの通説が覆っている部分が結構あって,本の装丁から受ける堅い印象より遙かに面白い.
爬虫類両生類の研究からは日本の南西諸島の成り立ちがかいま見える.(この辺は地学的にはまだ定説がないこともあり興味深い)
哺乳類の研究からはニホンジカの分析が特に面白かった.分子的に調べるととニホンジカは実は東西で大きく異なっており(東日本のものはむしろエゾジカに近縁)いったん津軽海峡と対馬海峡ができたあとに氷結した海を北海道から渡ってきたという仮説が展開されている.
今ホットな分野という勢いを感じさせる.