生き物や自然に対する接し方、考え方はこの4,50年で大きく変わっている。だから動物園も変わってしかるべきだ。子供のころの動物園の印象は、コンクリートの床と鉄格子の檻の中でひたすら行ったり来たりしている孤独な肉食動物、檻の間から手を出して餌をねだるサルたち。ちょっと悲しかった。地方の城下町にある小さな動物園だったと思う。きっとあの頃は入園客にとって動物がよく見えることと、飼育する側にとって管理しやすいことが動物の飼育施設を作るときの最優先事項だったのだろう。その後日本の動物園もどんどん進化していったが、初めて欧米の動物園を訪れ、カメラをどの方向に向けても絵になる動物放飼場を見てため息が出た。動物園専門の建築家=ズー・アーキテクトの存在を知ってさらに驚いた。今から30年以上前のことである。この本を読んで、日本にもそういう専門家が誕生していたのだなと知った。著者らの今後の活躍が楽しみである。日本中の動物園を変えていただきたい。
また、本書は近代動物園の歴史を知りたい者にとって大変役に立つ参考書であるとともに、展示学に携わる者にとっても大変示唆に富む内容だ。近い将来、動物園展示学という学問分野が成立、発展していくとしても不思議ではない。