プレーリードッグをご存じだろうか。そう、アメリカの草原に穴掘って集団で住んでる大型のリスみたいなアレである。
と、ここまではぼくも知っていた。でも、プレーリードッグが牧畜業にとっての害獣だとはぜんぜん知らなかった。本書によると、住みかの入り口の穴に牛とかが脚を踏み入れて骨折することがあるのだという。だもんで、牧畜業者は定期的にプレーリードッグを駆除しているのだそうな。
そして、その駆除法がすさまじいのだ。あの穴に水を流し込んで集団溺死させる、というのが以前の方法だった。なんと残酷な! でもこれはあまりにかわいそうだというので、最近になって採用された方法。
巨大掃除機を穴につっこんで群れごと吸い取る。
すごい!あまりに合理的!それで吸い取ったプレーリードッグをどうすんのかというと、ペットとしてありがたがる日本に大量に輸出してたんだという(今では日本が禁輸にしているけど)。こんなこと、わくわく動物ランド(古い)では決して教えてくれますまい。
この本にはほかにも、シーラカンスを生け捕りにして水族館で飼う計画があったとか、エリを広げて走るエリマケトカゲの真実(走るときは空気抵抗を避けるためにエリを閉じているのが普通で、エリを閉じ忘れていたのは撮影スタッフにいじめられて極端な恐慌状態にあったからに違いない!)とか、おもしろすぎるエピソードがいっぱいだ。
著者が何者かというと、動物の商人。海外のうさんくさいブローカーとつきあって珍しげな動物を見つけて、日本の物好きに売りつける仕事だ。本人も相当、うさんくさい。
実際、逮捕歴も複数回あるようだ。ここらへんのところは本書にはくわしく書いていないので、自分でちょっと調べてみたところ、最初の逮捕はなんと二十歳のとき。東南アジアからヤマネコとテナガザルを密輸した罪だ。底の部分が二重になった木箱をつくって、上の部分には輸入が許可されてるコウモリをいれてごまかしつつ、下の部分に禁輸のヤマネコとテナガザルを隠していたんだとか。睡眠薬をむりやり飲ませておとなしくさせたつもりだったが、税関を通るときにネコの睡眠薬が切れて「ニャー」と鳴いたのでばれたんだという。おまぬけー。あだ名はワシントン条約にちなんで「ワシントン君」だったらしい。
というわけでこの人、客観的に見れば相当に後ろ暗いところもある人物であることは確か。それでも本書から受ける印象としては、金目当ての強欲悪徳業者というだけではない。子供の頃から動物が好きで、趣味が高じて仕事になってしまった究極のオタク、といった感じである(顔も完全なオタク顔)。憎めない。
本書に記されてる動物のいろんなエピソードも、動物の生態を知り尽くした彼だからこそ書けるものばかり。レバノンの子供たちにいつか本物のキリンを見せてあげたい、と語るセンチメンタルな一面もある。笑えると同時に勉強にもなり、「野生動物の見せる壮大な生命のドラマ!」「何はともあれ環境保護はだいじです!」といった大手マスコミ的な見方がすべてじゃない、ということも楽しく理解できる。とても良い本だ。
ひとつだけ残念なのは、自らの逮捕について詳しく語っていないこと。反省して見せろ、というわけではないんだけど、いま振り返ってみてどう思ってるのかとか、ああやったらばれなかったのに、という後悔と改善策とか、そういうのでもいいのに。逮捕なんて劇的なエピソードには、本人しか知らない裏話が絶対にあるから、格好のネタになったはず。