もともと「ちくまプリマー新書」から3分冊で出ていたので、エッセイかなと思い後回しにしていました。文庫にしてくれて良かったです。コスパもはるかに良いし。
なにしろ子供自身に読ませる本としても、大人が教育や社会を考える本としても秀逸です。
橋本治さんが子供のころ体験し、感じ、考えていたことがそのまま反映されているケンタくん。国民全体の上昇志向が今より強かった時代の子供をとりまく環境と、いつの時代も必ずある子供の「生きづらさ」の実感。それを子供自身がどうとらえ、どう肯定して大人になっていくかが非常によみやすく描かれています。励まされる子供は多いと思います。
一方で、内田樹の「下流志向 -- 学ばない子どもたち、働かない若者たち」の真逆を形にしたが本書だとも読めます。「勉強ができなくても恥ずかしくない」と気付いたケンタくんは、実に鮮やかに「学ばない」子供の逆を示し「働かない若者」の逆の姿で最終章に現れてくれます。さすがは橋本治さんです。筑摩さん、もっと宣伝してください。ちゃんとセールスして多くの人に読んでもらってください。