シモーヌ・ヴェイユは労働者の生活を知るために、聞き取り調査だけで済ませるような人間ではなく、実際に労働と同じ生活を送る哲学者です。
彼女は工場労働者として一年働きました。つけていた日記、自分の頭痛、疲労、気持ち、仕事への集中など、実際の現場にいなければわからないことが記されています。
この日記だけのものは別のところで文庫本で出ていますが、それを含んだ、学者としてのヴェイユの書簡も含んでいて、工場で働く動機、日記では書かなかった客観的監察などが記されていて、日記がよりわかりやすくなると思います。
あえて言うなら、ヴェイユは時間がありませんでした。「石の上にも三年」といいますが、「女工たちが争っている姿」だけはっきりと見えました。なぜ争うか、そこまで切り込むだけの余裕はなかったのでしょう。
おそらく、ですが、全員で達成しなければならない仕事量であると、体力の弱い女工はいじめられます。他の女工により多くの仕事をさせ、同じ賃金をもらうからです。
そして個人のノルマ達成による賃金の場合、仕事の取り合いも起こります。家でストレスが多いとか、病人がいるかいないかで、お金の必要度も違い、疲れきっているので争うのだと思います。
彼女が開いたこの切り口はとても大切なものです。
ここから労働者とインテリとの相互理解と対話が生まれることでしょう。