どこから見るかによって世界は違った風景に見えるとはよく言われますが、この作品は台湾から見た中国の姿です。この視角は重要です。FTなどでは、もう世界は米国と中国による共同統治の段階に入ったかのようなトーンの記事が満載です。日本に関しては相変わらず、ずれまくった偏見丸出しの記事のオンパレードのFTですので、おそらく中国に関してもそうだろうという想像はつくのですが、こうまで毎日見事な英語でそのトーンが繰り返されると、中国語が読めない私のような人間の頭脳も徐々に洗脳されてしまうようです。日本のメディア?これはもう脳天気の第五列ですわ。さて本書の前半では中国からの台湾の直接投資の撤退と失敗がいくつもの事例と共に取り上げられますが、さてどこまで一般化すべき現象なのでしょうか?この前の選挙で国民党系が勝利したという事実とはどうシンクロするのでしょうか、いまいちわかりません。中国をニヒリズムの新自由主義の国家(105ページ)と捉えたのは慧眼ですが、これはむしろファシズム国家と捉えた方がわかりやすそうです。社会主義とファシズム国家の差は微妙なものです。本書の結論は、「そもそも日本にとって中国大陸は「鬼門」である」ということです。「大陸浪人、関東軍、満州国、日中友好人士」の前例に、今度は日本の大企業の屍が加わるというだけです。もっともこの屍には、満蒙開拓民に代表される庶民をも巻きこんでしまうという悲惨なものでもあります。たかだかわずかここ10年程度の依存の歴史に、必然性を勝手に見い出して、「バスに乗り遅れるな」症候群をいつも示してしまう日本人、このメンタリティは日本の原型なのかもしれません。