構成要件を実質化し、違法性も実質化し、これに対応させて
故意概念も実質化するという実質的犯罪論は前田雅英刑法の体系であるところ
本書は著者の実務家として卓抜した語り口でざっくりとそのダイジェストを
示したものである。木村光江「刑法」が前田刑法のほぼ完全な短縮コピーであるのに
対して、本書は前田刑法が文章として読みづらいために見えにくくなっている
「核」の部分を具体的にわかりやすく抉り出している。
それゆえ前田刑法の読者が頭の整理に用いるには有益である。
前田刑法は実務家の思考ツールとして使うにはシンプルで小回りの利く理論である
ということがよくわかる。特に総論部分がコンパクトにまとまっている。
しかし行為無価値・結果無価値二元論や純粋結果無価値論を採る人の
腹にはすとんと落ちていかない可能性が強い。この点について一定の配慮はしてあるが
全く刑法を学んだことが無い人が「入門書」として用いるにはレベルが高いかもしれない。
また、前田理論自体昨今は流行らなくなっているので留意も必要だろう