去年全10巻が完結した『加藤周一自選集』の毎回の解説文には注目しており、いずれ一冊の本にまとまるとは思っていたが、こんなに早く刊行されるとは思っていなかった。嬉しい驚きである。
内容は、その解説文が芯になるのでさほど目新しくないのかと思っていたが、読んでみると、ボリュームも増えて時代背景なども格段にわかりやすくなっており、こうして一冊にまとまることによる利点を存分にかんじた。ここに描かれる加藤周一は、これまでにみえていたより、より肉体的であたたかい。―「理」にして「情」の人―という、当初やや長すぎるように感じたサブタイトルがしっくりなじんでくる。
そしてまた図版の魅力的なこと!私は、長らくどんな絵か見てみたいと思っていた『死んだ小鳥をもつ少女』が章の扉に使われているのを確認してこの本を購入したが、その他の扉絵も、どうしてこんなものが残っていたのかと驚いた。特に、加藤の母が亡くなった日の日記にはぐっとくるものがあった。
この本をきっかけに、あらためてまだ完読していない自選集を読みなおそうと思う。