タイトルと、商品説明欄にあった「一歩間違えば被害者から加害者へ。」のフレーズに惹かれて購入したのですが、正直期待はずれな内容でした。
DVや虐待の加害者の更生を目的としたカウンセリングを通して、「加害者は変われるか」という問いに対する著者の考察や意見などを期待していたのですが、タイトルとは裏腹に、被害者についての記述や被害者が回復するために必要なことについての方が、多く書かれています。うんと終わりの方で、DV加害者更生プログラムに参加して、暴力がなくなった男性がいる、とさらりと述べられているのですが、もっと詳しい内容を期待していました。
配偶者によるDVで悩み苦しんでいる人にとって、「加害者は変われるか?」という問いに対する答えは、喉から手が出るほど欲しいものだと思います。一般的には、暴力がなくなるケースは少ない、と言われても、自分の配偶者はそのごく稀なグループに属するのでは、と希望を持つ場合がほとんどだと思います。また、自分がDV加害者であることを自覚していて、治したいけれど治るのか、期間はどれくらいかかるのか、お金を払ってカウンセリング等を受ける価値があるのだろうか、と悩んでいる人もいると思います。DV加害者が配偶者であれば、離婚という選択肢もありますが、自分の子供によるDVで悩んでいる場合、暴力に加えて「私の育て方が悪かった」と自分を責めて苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。
そういった人々に対する一つの答えになるような内容、例えば、DV加害者更生プログラムでは、実際にどのようなことが行われるのか、そもそも加害者が完全に「更生」することはあるのか、「更生」までの期間はどれくらいなのか、暴力はピタリと止まるのか徐々に減るのか、プログラムに参加している間、DV被害者である配偶者や子供と同居し続ける方が良いのか、別居した方が効果が上がりやすいのか、DV被害者ができるサポートにはどんなものがあるか、等々が書かれていると思ったのですが、そうではありませんでした。DVや虐待を研究対象としている学者や専門家には、価値ある一冊なのかもしれないですが、実際にDVの渦中で悩んでいる人にとっては、さほど役に立たないように思います。
親によるDVを受けていた子が、自分の子供や配偶者に対しDVをふるうようになってしまう。
いじめられっこだった子が、いじめっこになる。
つまり、被害者が加害者になってしまう。
この現象の、心理的カラクリの解説も期待していたのですが、全く触れられていませんでした。
それどころか、性犯罪の加害者の行動や心理について詳しく記述されているのですが、家族という近い関係の中で、夫婦間であれば合意のもとに一緒に居る間柄での「加害者」の心理と、近づくのは加害者のみの意思、うまくすれば加害者は逃げ切ることができる性犯罪の加害者の心理には、類似点より相違点の方が多い思います。DVをしたいから結婚したり、虐待する相手が欲しいから子供をもつわけではないのですから。
さらに、かつて親から虐待を受けた人々の中で、虐待をする側になってしまう人と、そうならない人(例えば心の病に気づいてカウンセラーを訪れる人)との分岐点は何か、等の分析もできたと思います。(虐待を受けて育った男の子は皆、妻に暴力をふるい、虐待を受けて育った女の子は皆、自分の子供を虐待する、というわけではないと思うのですが…)
私の読解力不足もあるかもしれませんが、タイトルとは程遠い内容の本、というのが正直な感想です。