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伊右衛門はそこそこ勇気と誠実さがあるものの、無能、不器量な人物として設定されており、賢い妻の千代がうまくおだてて乗せることで、彼はよく働いて功名を重ね、少しづつ出世していく。
妻によって伊右衛門は何とかひとかどの人物たりえるように描かれている。つまり、妻がいなくては伊右衛門はロクに仕事もできない、ということだ。男から見ると、多少不愉快な描写もあるかもしれないが、そこは司馬氏の軽妙な筆によって、嫌味なく、楽しく読むことができる。
伊右衛門は才知は無いが、誠実な人物に描かれている。誠実な人間がコツコツやる仕事はバカにできないものだ。世の中の「男」とは、勇猛果敢な荒くれ武者や、機略溢れる頭脳派の智将だけではない。誠実一本というのも、得がたい人徳であり、それだけで大人物なのだ、と思える。派手さは無いが、愛情溢れる、大人の歴史物語。
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