意外な人に脚光をあて小説を書く。しかし読み終えた後はなるほどとおもわせるのだ。考えてみれ信長・秀吉・家康、そして三百年続いた歴代の徳川家に仕えてきた山之内家の藩祖の物語である。やはりドラマが歴然としてあるのだ。
主人公千代の勧めで山内一豊が金十枚で豪華な馬を手に入れ、次第に出世していったという逸話がある。本書でももちろん見てきたかのような場面でコマをすすめている。史実にない逸話であるという論議も多い。しかも本書解説によると司馬本人は「この話は作り話かもしれないねー」と屈託なく話してるという。この作り話かもしれない逸話を逆手にとってさらにおもしろく、まるでタイムマシンで見てきたかのように描いていく。これが司馬文学の真骨頂なのだと思う。
家康から一豊が四国の領主にすることを告げられた時、読者である僕も千代と一豊とともにさわやかな涙がでました。
主人公たちに同化してしまう物語ですね。