正直、本編は5つ星を付けられない。圧倒的な北アルプスの映像は、元山岳部の自分にも迫るものがあったし、日本映画界を代表する俳優たちの名演も文句がない。でもホンが弱い。ここが本作の弱点だろう。木村大作は泣く子も黙る「大」カメラマンだ。その木村が監督として「撮りたいものを必死で撮りあげた」のが本作であり、VFXもスタントも使わないのが俺の流儀だ、ということを高らかに謳い上げているが、観客に何を訴えたかったのか。「どうだ、大変だったのがわかるか?」というのなら、それは活動写真とは言わない。ドキュメンタリーと映画の差は、やはり映画の「嘘」の中に引き込めるかどうかだと思う。そこの欠如が唯一残念だった。それでも、本作は偉大な作品だ。メイキングで香川照之が「この映画に入った時点で、もう遭難しているようなものだから」と語っていたが、まさしくこれは「撮影」ではなく「苦行」だった。自分も仕事で富士五湖・西湖のハイキングコース取材時、TVクルーに同行したことがあるが、ハイキングコースでさえカメラの持ち運びが難儀だったのに、剣岳に映画機材っていうのは想像を絶する。谷口組の山岳アクションの傑作「銀嶺の果て」も大変だったみたいだが、本作もこれに匹敵したのでは。木村監督インタビューでは、熱く語る「覚悟」にカツドウ屋としての執念を感じた。日本映画の底力を実感できたことに対して、総合点で5つ星。