覇王の船。ここに描かれているのは、資本家の手先・蟹工船漁業監督「罰河原赤造」と、ストライキを興そうと工員をまとめようとする、もと炭坑夫「龍さん」
この二人の対決である。
二人の対立を中心に、蟹工船の悲惨な現状が書き込まれていく。
小林多喜二の原作のほうは、もっと細々とした、蟹工船の日常がリアルに描かれている。
劇画にするには、登場人物を絞った方がいいし。分かりやすい。
この覇王の船は、違った切り口で描いている。
後半に原作が載っているので、読み比べてみると面白い。
死んでもロープを放さない龍さんの右手は、その怨念とも言える意志の強さを象徴するアイコンとして、強烈なインパクトがある。
当時の蟹漁の工程をもう少し具体的に描いて貰えると、さらに良かったと思う。
ページ数の関係で、厳しかったのかも知れないが・・・。
マンガで解説とか、テキストの絵解き。そんなマンガは面白くないし、類書はたくさん出ていると思う。
現代、プロレタリア文学が再燃焼しているといわれるが、1930年前後の社会状況とは全く違った意味で興味を持たれているのだろう。
貧富の差が拡大したと言われているが、当時のそれとはまったく構造が違っている。下の者が上に口出しすることすら出来なかった。餓死する者さえ珍しくなかった。そういった、社会状況とは違う。
ただ、現代は一億総中流の幻想から抜け出て、現実を少しは観察するようになってきたのかもしれない。