本の中にも登場する佐藤まさあきは、その著書「劇画の星をめざして」の中で辰巳ヨシヒロを「彼なくしてはこんにちの劇画の発展はなかった」と絶賛している。この本にも出てくる辰巳の作品「開花の鬼」を例に出して、一見無駄に見えるカットがリズムを生んでいて、手塚治虫の映画的手法といわれたものを、さらに数段進歩させたとしている。現在では誰も不思議に思わない人物が走っているときのバックの斜線も辰巳の新技法でスピード感を生んだと。
劇画の出発点ともいえる雑誌「影」の創刊号のメンバーは辰巳ヨシヒロ、松本正彦、さいとうたかを、久呂田まさみ、高橋真琴、桜井昌一の6人で構成されているが、辰巳の兄の桜井が本の中では劇画に対して批判的だったことを描写してあったのは意外だった。
しかし手塚治虫の人脈がここにも濃厚に存在していたとは、手塚の影響力の大きさをあらためて悟った。