「19世紀も終わりに近づいた6月のある日のこと、赤い髪をした一人の少女が、カナダ本土からプリンス・エドワード島に向かう連絡船の上にいた・・。」
羽佐間道夫さんの落ち着いた語りで始まるこの物語。
本作は1979年に制作されたテレビシリーズを基に編集された劇場版です。2010年公開された「借り暮らしのアリエッティ」の併映作品として一部劇場で公開されました。
監督はテレビシリーズを担当した高畑勲監督。キャストはテレビの声に準じています。高畑監督の提案で1989年の劇場版制作時に50話を尺の中にまとめるのではなく、第一章であるアンがグリーン・ゲイブルズへやってくるエピソードまでを再編集しています。ほぼテレビ版に準じているとはいえ、この構成は1本のストーリーとしてよく纏まっていて、正解だと個人的に思います。
既に30年余り前の作品となりましたが、劇場版をご覧になってからテレビシリーズ7話以降をご覧になってもよろしいかと思います。今までビデオ化された事もありましたが、2010年にHDリマスター化し劇場公開されています。
この作品の特徴はモンゴメリの原作に忠実に映像化し、アン・シャーリーの成長を丹念に描いた物語と、美しい背景と素敵な音楽、アンを演じた山田栄子さんのひた向きな取り組みが多くのファンに長年にわたり支持されています。
緻密な画面構成(レイアウト)を13話まで担当したのは、宮崎駿氏。カルピス劇場では「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」で高畑監督と組んだ仕事をされましたが、本作が最後のテレビシリーズとなります。降板の理由は「ルパン三世 カリオストロの城」制作の為ということです。
年老いた孤独な兄妹のもとへ働き手として男の子を頼んだはずが、取り違えにより女の子がやってきます。とまどう兄マシュウはおしゃべりでやせぎすなアンに好感を抱きます。ですが、妹のマリラは
アンを置いてはおけないといいます。
「あの子は役に立てなくとも、わしらの方であの子の役に立ってあげられるのじゃないかな」
マシュウは訴えかけます。しかし、かたくななマリラの心を変えることはできません。自分のふがいなさにマシュウは煩悶とします。小さな体に溢れんばかりの想像力を秘めたこの少女、アン・シャーリー。彼女もやはり、孤独で愛に飢えていました。
グリーン・ゲイブルズの孤独な老兄妹は彼女をどう受け止めていくのでしょうか?
物語の中で少しずつ成長していくアン。緑の切妻屋根の家で、移ろいながら自分と掛替えのない大切な人と育む人生を描く物語。その始まりの物語「グリーン・ゲイブルズへの道」です。
駅で人待ち顔で荷物に腰掛けるアン。「喜びの白い道」を馬車は駆け抜けていきます。
たくさんの皆さんにごらんいただきたい作品です。アニメーション製作のスタッフ一同に感謝します。