(日経バイト 2004/07/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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これまで,何らかのパタンはその背景に,そのパタンを生み出す全体的な法則があると考えることが多かった。しかし,創発性概念の登場によってパタンは,それを構成する個々の要素が隣の要素との関係に基づいて振舞っているだけで,生まれてくるものだ,と見なされるようになった。
本書は,様々な創発現象を一切数式を用いずに紹介する。アリのフェロモンがコネクショニストモデルでの結合荷重と同じ意味として解釈できる,などの視点は,こうした領域横断的な読み物でしか得られないものだ。
しかし,創発現象のオンパレードに留まっており,筆者は本書で何が主張したかったのかが不明瞭で,読み進むうちに少々退屈を感じた。
それにしても,ミンスキーでさえ,ある創発系のシミュレーションを見て,そこにトップダウンに制御する力を見てしまうところからなかなか抜け出せなかったとの挿話は,人がいかに支配型ルールを志向するのかが伺われ考えさせられた。
少しでも創発系がらみのシミュレーションなりを経験した方には,より豊かな創発系に対するイメージを抱かせてくれるであろう一冊であった。
理論面を考察して話を進めるというよりは、具体例を次々と紹介しているので、(物足りない人もいるかもしれないが)創発という言葉を知らなかった私にはとても読みやすかった。迷路を解く粘菌や工業都市マンチェスターのような都市の話が特によかった。
(1)創発に気づく前の人々が同種の現象をどう観察していたのか?
(2)創発に気づいた人々がどんな発見をしたのか?
(3)創発を自覚した人々がどんなことをしようとしているのか?
という三段階に分けて語っていて、前二つの段階の話が興奮するほどおもしろい。しかし、最後の段階の話は尻すぼみの感があって、将来の見通しがよくわからない。クリントンのスキャンダルが放送局上層部の意図を離れて過熱報道されたことを、創発の制御不能の側面だといわれてもピンとこない。訳注のつっこみも最後の段階に多いよう。
とはいえ、最適なアルゴリズムを考え出すメタアルゴリズムの話は素直にすごいと思う。ひとつひとつの要素は大したことがないものでも、複雑なものが生まれることに可能性が感じられる。現在進行形の話が大量に蓄積された頃にこの本の続きが読みたい。
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