恥ずかしながら、私はこの小説の紹介を朝日新聞の日曜版で知るまで作者宮本昌孝と言う人物の存在を全く知りませんでした。申し訳ない。
しかし、実に新鮮な発見だった。
最近発見した時代小説と言うと、
変化―交代寄合伊那衆異聞 (講談社文庫)がある。本作品は、ちょうど校の交代寄合のシリーズの最初の巻のような、からっとした明るさとスピーディさがある。
しかし、本作品は、はるかに緻密で、ドラマチックであり、ロマンも奥深い。たいそう面白く、まさにエンターテインメントとしても一級の作品と思う。作者を知らず本当に恥ずかしい思いでした。
ストーリーとしては、基本的に史実に基づいている。だが、本来戦国時代と言えば、武将が主人公で、末期の足利幕府の存在は、従来の小説ではほとんどおまけ、道化、にしか描かれてこなかった事実がある。
しかし、この作品で捉えた、足利幕府末期(最後ではないが実質的には最後と言っていいだろう)の将軍義輝の人物のなんと生き生きとして魅力的なことか。歴史的な人物で、意外に表に出ず一般に知られていなかったと言う例は、北方謙三の
武王の門〈上〉 (新潮文庫)に見られる、懐良親王に似る。どうも歴史時代小説は、若干武士に偏るのではないか、と思ったですね。特に、江戸までの時代には、こうしてみると、なんのかんのと言って、天皇あるいは公家の存在は、単なる飾りやおまけではなく、歴史そのものの重要な立役者だったことがわかる。
とにかく知らなかった。作者も、ストーリーの中心である主人公義輝の存在も。
そして、ただそれを知っただけではなく、こんな面白い渥美のある、素晴らしい小生を読めてとてもうれしいと思うのです。ちなみに、上中下三巻を仕事のある平日にも関わらず、4日ほどで読んでしまいましたが、夜、区切りまで寝られない状態になることは覚悟ですよ!