著者が柳生家菩提寺の芳徳寺を訪れた時、住職に見せられた古びた写本『旅不知』。それは剣法各流派の奥儀・秘太刀に関する究明の書だった。この『旅不知』をもとに、各流派の奥儀の名前のついた由縁となった話や秘太刀にまつわる話など七作を収めた短編集です。
一刀流、先意流、柳生流など、取り上げられている剣法の流派は、おそらくは実際にある(あるいはあった)ものばかりなのでしょう(天井に逆さにぶら下がったり、畳を蹴返したりと、ちょっと怪しいものもありますが)。また、一刀流「青眼崩し」、先意流「浦波」、知心流「雪柳」、柳生流「八重垣」等、奥儀名も実際のものだと思います。『旅不知』からの抜粋の一文を各作の冒頭に附し、これら各流派の兵法談が語られていくのですが、解説によると、もととなった『旅不知』が、どうやら著者の創作らしいとのこと。著者の流麗な筆致に魅せられ、他の作家も『旅不知』をもとにした小説を書いていないか、『旅不知』が現代語訳付きで一冊にまとまっていないか探してみようと思いながら読んでいたので、これには見事にやられました。
時代小説が好きな人ならきっと気に入ることでしょう。ぜひご一読を。