池波さんの本は面白くて、それこそ1冊読み終わるのは読者にとって、それこそ、
「あっ・・・」
という間ですが、気付くと丑の刻だった、なんて事は、彼の読者であれば一度や二度はご体験している事と存じます。まさに狐につままれた・・・。そんな気分になってしまう事がままある訳ですが、この「狂乱」の中の一篇、「狐雨」もまさにそんなお話しであって、伏見稲荷の神通力を備えたお狐様が、かげながら大活躍なさる、実に面白おかしな内容で、ほぼこれ全編刃傷噺という「剣客」ワールドの中でも一層際立っております。
また、よく、本編の主人公が「天狗」とか「河童」とか言われて、ちょっとした悪戯をしでかしておりますけれども、池波正太郎というお方は、まさに、
「天狗そのものなのではないのか、ナァ」
と思い巡らすのも、楽しい事です。僕は何故か、この「狐雨」を読み返すのが大好きです。