超常的・心霊的なものとして一般的にも「偏見」や「オカルト」で片付けられて誰も“考えようとしない”「前世(過去生)・人格の転移」の事柄について、精神医学的な側面から「膨大な科学的検証・証拠」を挙げながら真摯に研究に取り組んだ、カナダ出身の精神医学博士イアン・スティーヴンソン(Ian Stevenson)の最後の著作です。博士は、精神医学的に「胎内記憶」や「遺伝子記憶」などでは説明のつかない、幼い子供達に見られる「故人のものと思われる奇異な記憶」に着目していました。
国内ではいまだに「前世記憶」を“おもいこみ”や“いんちきオカルトの一種”という偏見した考えが大勢を占めているようですがスティーヴンソンの研究はそのような偏見とは一線を画し全く異なっています。彼は、奇異な記憶を持つ子供達の膨大な資料を世界から集め、その事例を一つひとつ検証していました。その研究スタイルは思い込みでもオカルトでもない“真に科学的な研究姿勢”です。
そのため彼の行う検証は厳しく検証的にも「怪しい(親が騙りを行っていると思われる)」場合は、その事例を却下し避けてもいます。また逆に驚異的な一事例を挙げて「前世」を安易に肯定したりするような軽率なことも行っていません。その冷徹な科学的研究スタイルは世界各国の精神医学でも高く評価されています。
さて前著『前世を記憶する子どもたち』では、アメリカ先住民を含むアジアの子供達の事例を扱ったのに対し本書では「ヨーロッパの子供達」の事例を纏めています。アジア圏ではインド(ヒンドゥー、仏教など)の「輪廻思想」が根強いことを論拠として「その影響で前世が語られている」という批判がでてきます。その批判に答えるうえでもヨーロッパの事例は重要です。
一般に現代ヨーロッパはキリスト教思想の影響で「生まれ変わり」思想がタブーとされています。しかし、そのような前世否定の信仰思想の土壌に生まれた子供達にも「奇異な記憶」が見られる事例があることを本書は明らかにしています。文化・風習・信仰の違いがある世界各国で「子供達が故人の新奇な記憶を語り、または痣(あざ)」を持って生まれて来ています。スイス人の子供が見知らぬアフリカ・インドの生活を語ったりする事などもあり胎内記憶や遺伝子記憶では説明不能のものだといえます。
本書は「大衆・一般常識」という“偏見”を脱皮し真に常識的・真摯な考え方に光をあててくれる書物だと思います。一般読者を意識した読みやすい構成で纏められており、第1部には「ヨーロッパ人の生まれ変わり信仰」(p.7-21)と題した古代からの思想を概説した詳細があります。プラトン、オリゲネス、プロティノスなどの神秘哲学者らの発言を取り上げてもいますので、これから形而上学を知りたいと思う方にも優しい配慮がなれてていて読みやすいです。また文字も大きめで字体(フォント)もキレイです。