現在フランス在住でグラフィック・ノベルを多数著しているイラン人女性作家マルジャン・サトラピ。彼女が親戚のイラン女性8人とともに夕食後のお茶を楽しみながら語り合ったおしゃべりを綴った一冊です。話題は表題にあるとおり、イラン女性の恋愛と結婚。保守的な宗教国家にありながら、日ごろの閉塞感を弾き飛ばすかのような勢いにあふれた赤裸々なトークは、現代イランにおける「デカメロン」のような趣を呈します。
彼女たちを支配する最も大きな価値観は「処女性」です。それはおそらく何百年にも渡って男性が押し付けてきた価値観であるはずなのですが、女性たちも大なり小なりそれに重きを置く人生を良しとして受け入れてきました。9人の女性たちはサトラピの祖母から自世代までと幅広い年齢層に別れていますが、それでもその保守的な結婚観はおよそ50年の幅をもってしても大きくは覆っていないことが興味深く見て取れます。
夫の身勝手な都合で離婚を強いられることになった若い女性が、もはや処女ではなくなった自分はこの後どうなってしまうのかという嘆きの声を当たり前のようにあげるのです。かつてに比べれば処女性に重きを置くことが、そもそも現実的ではなくなった日本や西洋の若者たちからすれば、いつの時代の話かと耳を疑いたくなるような状況でしょう。
むしろ老境の域に達したサトラピの伯母が、これからはどんなにセックスしても誰にもばれないと開き直って見せたりします。女性たちが年齢とともにしたたかさを兼ね備えていく点にたくましさを感じます。
サトラピの著作は本書を含めて「ペルセポリス」シリーズなど邦訳が出ているのはわずか3点だけ。フランスでは既に10点が出版されているということですから、さらなる日本語翻訳版が出ることを期待してやみません。