中身は素晴らしいの一言。
さすがノーベル経済学賞受賞者だけある。
ただ正直翻訳が辛い。
序文を見て見ると著者は経済学だけでなく、他の社会科学の人間にも有用なものであることを想定し、経済用語を抑えた書き方をしていると言っている。
しかし翻訳者が経済用語に書き換えてしまっている感がいなめない。
言葉の問題もあるが、英語だとそのままで通じる言葉も日本語ではそのままだと経済用語になってしまうものもある。
もちろんある程度知識がある人を想定した著作であるから問題ない範囲かとは思うが、慣れていない人には読むのが大変であろう。
また言葉の意味を間違えないようにすることも必要である。
一例としてここでいう制度(institution)は明文化されたものだけではない。
このことは本著で言及されているが、これを勘違いするだけで、その他の話は全て狂ってきてしまう。
故に社会科学の問題に慣れている人が読むべきであり、値段は手頃で経済史だから…という気持で手にとるべきではない。
基本的に中身は制度の説明で占められる。
今日の新制度学派の代表者でもある著者が、制度とは何かを述べた著作で経済学の方ももちろん、社会ネットワーク論などに興味がある方にもいいのではないだろうか。
全体を通して制度という言葉が非常に多く出てくるので、制度に対する幅広い視野を与えてくれるだろう。
しかし、あまりに広義の意味で展開している傾向もあり、内容の理解には十分に時間をかけるべきである。
著者は経済史を専攻しているが、理論を経済史に盛り込むという新たな経済史の代表者らしく、しっかりと理論を展開しており、経済史以外の方にも有用であろう。