本書は、東日本大震災での行動に見られたように人間に備わっている利他性を科学的に分析したものである。
利他性の行動の背景には、もともと人間が小集団で活動していた頃に見られた「情けは人のためならず」という行動が、現代社会では「評判」に変質しているとする。
その例として、ある実験を披露し、他人の目があるとないとでは利他性の行動に違いがあるという。
また、ある集団の中では利他性の行動に報酬を与えるより、逆の行動に罰を与える方がコストが少ない。これが、利他性を維持する秘訣であり、気前のよい人は忘れられけちな人ほど記憶に残るという実験結果からも明らかになっているという。
一方で、利他行動をとった時は、心地よさを表す脳の線状体という部位が活発になるという。これは、一連の伊達直人の寄付行動などに見られるものである。
利他性というとどこか美しい行動のように思ってしまうが、行動学的にみると、その意味がかなり異なっているのが、少し悲しい気がする。
とはいえ、最終章で著者が述べているように、災害時に見られる人々の利他的な行動に見られるとおり、人類が生き延びるための最も大切な習性であると感じた。