「利己主義」
よく聞く言葉です。
よく目にする状況と言ってもいいかもしれません
その対義語を挙げてみると、「利他主義」というのかな…
あまり聞かない言葉なうえ、あまり目にしない性質です。
それは結局、少数派だということなのでしょう。
本書はその意味合いからくる「利他」を、モットーとする『利他のすすめ』です。
著者は日本理化学工業 会長。
この会社は、チョークを製造する工場を運営しています。
特筆すべきは、その工程内の「改善」の歩みです。
現在、製造ラインをほぼ100%知的障害者のみで稼動させるまでに至りました。
そこまでの道程、エピソードがいくつか紹介されていますが、
どれも、ハッと気付かされる示唆に満ちています。
実際、著者たちがその仕事を通じて、受け取ったものの方が多いと自認している程です。
<仕事がうまくいかないときや、障害者が言うことを聞いてくれないときには、
相手のせいにするのではなく、自分の態度や指示の仕方を見直すようになります。
そして相手の立場に立って、相手に伝わるような対応をする力をつけていきます。
「人のせいにしない」からこそ、自分を磨くようになるのです。>
知的障害者たちの反応はストレートです。
そして彼らに不信感をもたれてしまうと、それは「無反応」という「拒否」の意思表示で返ってきます…
「主と従の力関係で従わせようとしても、それが成功することはない」
「嘘やごまかしはまったく通用しない」
この会社全体に培われた認識です。
知的障害者との関係に悩む社員に、著者はこう語りかけます。
「君は本気で仕事に取り組んでいますか?
本気で彼らのためを思っていますか?
君が本気でなければ、彼らは応えてくれないんだよ」
それは、社員が我が身を振り返るきっかけに他なりません。
そして、知的障害者の正直さが、彼らを成長に導いてくれるといいます。
「利他主義」を愚直に実践してきたからこそ、現在の発展があると著者は確信しています。
その心境に至るまでの経験、会社の成長は、素敵なエピソードに溢れていました。
現在、障害者雇用割合74%
著者は、今後も彼らに、「他人から必要とされる喜び」を得られる職場、社会を提供したいと望んでいます。
「あともう少し、お役に立てれば、僕の人生はいいかな」
そんな心境になりつつある著者。
その器の大きさも、障害者と真剣に対峙してきたからこそ、磨かれたものかと思います。
「自分が自分が」という利己主義が多い中だからこそ、
利他主義という実践例を見ることで、心を豊かにしてもらえました。