本書は、(1)論点と結論、(2)事実の概要、(3)法の解釈、(4)法の適用、(5)コメント、で構成されています。
とりわけ本書が異彩を放っているのが、まさに判例本の枢要部ともいえる「法の解釈」「法の適用」「コメント」の三本柱です。
裁判所が条文解釈などからどのような規範を立て(法の解釈)、当該事案の事実をどのように当てはめて妥当な結論を導いているのか(法の適用)を、それぞれ丁寧に抽出し、分けて挙示することで、事実→解釈→適用という云わば裁判所の論理(=思考経路)が可視化され、事案解決までの過程を鮮明に浮かび上がらせています(おそらく論文試験への応用を視野に入れてのことでしょう)。
さらに「コメント」では、それぞれの判例において、裁判所がどこまでを検討し、どこまでを検討していないのか。判例が何を含意し、何を含意しないのか、しつこい程に言及しています。それはすなわち、「該判例の射程を明確に画定することなしに、正確な判例理解はありえない」という執筆陣共通の信念から産み出された真摯なこだわりなのでしょう(この点については、本書「はしがき」を参照)。
たとえば、本書掲載番号(27)「接見指定の合憲性・適法性」では9ページが費やされ、うち6ページ強を「コメント」に割いて詳述しています。このような紙幅に制約されない姿勢は本書全体に貫かれており、一判例につき原則見開き2ページの百選とはそのコンセプトに截然たる異同があります。
残念ながら私の拙い説明では、本書の真の価値を十分に伝え切れません。法学部生、とくに司法試験を目指す方々には是非一度本書を手に取って確かめてみてほしい。少なくとも私の言っていることが大袈裟でないことだけは納得していただけると思います(私見ですが、予備試験から司法試験突破を目指す方々にとっては、難解な判例理論修得の時間短縮に大きく貢献するものと期待を寄せています)。
「法学教育現場において、無思慮に百選を指定教材とする時代はもはや終焉を迎えつつある」
本書の登場は、そんな想いを強烈に抱かせるものです。